2013年10月10日木曜日

これ突出した青春だけど、でも少年がみんな普遍的にもっているアホなところ、かもしれない。この絶妙の「アホ」がたまらん


岸和田少年愚連隊




中場利一
集英社(文庫)2010




ぼくは大阪の東部地域、その名も東大阪(旧布施)市出身である。

むかしの河内の国だ。その同じ河内に岸和田がある。岸和田は和泉の国という指摘もあるかもしれないが、和泉になるまえは河内だった。

この本の舞台は、その岸和田(大阪南部)である。

そうあの元プロ野球一のいかつい男、清原和博が生まれ育ち、だんじり祭で全国に名をはせる町である。あの清原でさえ影が薄くなる、彼を3倍はヤンチャにしたガキ、破天荒なオッサン、オバハンが、このノンフィクション(実話?)の登場人物だ。

まあ、この本に出てくる町で育ったら、「そら、みんなキヨになってもしゃあない」と首肯してしまう土地柄である。

ぼくが生まれ育った河内永和(近鉄奈良線の駅名)の近辺も、ガラがええとはいわんけど、岸和田のそれとは次元がちゃう。後者のそれは、もうほぼ治外法権、無法地帯だ。

で、この本は、鉄板を忍ばせた学生カバンを武器に、これ死ぬんちゃう、という半端じゃないケンカを繰り返す、凄惨そのものの中学生の日常を描いたものだ。

だけど、これ、ムゴイのはたしかだけど、なぜかそういう印象が残らない。過激な暴力描写がたっぷりなんだけど、すこーんと抜けた清々しい読後感がある。

この感じ、ヒトという動物が先験的に有している普遍的なサガとでもいうのか、そういうものを余すところなく発露してしまう潔さかもしれない。

自分のそういう衝動に素直というか、まあ単純にアホなんやけど、そのアホさがええ感じで描写されている。こんな無茶な少年が、おとなになって、こんな達者な文を書く、という驚きもある。

ぼくは大阪の私立の坊っちゃん学校で、チュンバー(主人公)の工業高とは同じ男子高とはいえ、その生徒のキャラがまるでちがう。

だけど学校をさぼり、パチンコに明け暮れ、競馬、競艇に通った共通項がある。また70年代初期と中期というずれはあるけど、ほぼ同じ時代の空気を吸っていたわけだ。もちろん、ぼくは主人公のようなケンカはしなかったし、できなかったけど。

高三の初めかな、ぼくはこの本に出てくる岸和田の春木競馬や住之江競艇に、学生服とカバン姿で行ったことがある(なぜかぼくは、ほとんど補導されなかった)けど、よくぞチュンバーのような連中に見つからなかったもんだと、本書を読みながら胸をなでおろした。

遠いむかしのことだけど、こいつらにからまれていたらと想うと、いまでもぞっとする。

でも、こんなオモロイ本、メッタにありまへんよ。

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